
そして誰にも言えなくなった
『誰にも言っちゃダメだよ!実は…』オレが小声で話し出すと、隣にいる彼女はまるで頬を寄せるかのように接近してくる…店内はざわついているので、聞き取りづらい。
ふた昔前くらい、ショーパブやキャバクラなどに通っていた頃の話。当時は酒が入ると、女の子に対しほとんどが嘘(冗談)話。職業を聞かれても「美容師」とか「マッサージ師」とか、まともな事は言わなかった。
オレの容姿は背が低く、なで肩、短足、たれ目、鼻ぺちゃ…を生かして、あこがれの「オートレーサー」のふりもしたが、西川口界隈ではバレバレの通用しない嘘(冗談)。
ある日、上野に飲みに行った時の事。オートレース自体知らない人が多い中、横に付いた女の子に職業を聞かれたオレは、少しじらしながら『誰にも言っちゃダメだよ』と念を押し彼女の耳元で「オートレーサー」と囁いた。その瞬間、寄り添っていた彼女の上半身はオレから離れ、意外な反応を見せた。否定ではない「うそっ!」を連呼した後…『昨日もオートレーサーのXさんが来たの』と、もらったと言うX選手のテレカを見せられた。正真正銘のX選手。
そして彼女は今度、西の方にレースを見に行くとか…いつの間にか、オレは語り手から、聞き手に回っていた。まさか、あの西の方のX選手がこんな店に来てるなんて…前日来ていれば、オレもX選手に会えたのにと残念に思えた。
この事がきっかけで冗談でも、自分が「オートレーサー」とは言わなくなった…
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